今後の例会スケジュールと作品紹介

2024年6月 第291回例会 プリエール「銀色のライセンス」

日時:6月8日(土) 17時30分開演(上演時間1時間40分、休憩なし)

会場:FOSTER(フォスター)ホール(昭島市民会館) 

 

作・演出=福島三郎 出演=竹内都子 中西良太 高畑こと美 倉野章子 古今亭菊しん

<プリエールの紹介>

プリエールは制作部門を持たない創造団体や俳優だけの小さな団体の制作を専門とする会社として設立し、一緒に作品づくりをしてきました。最近の首都圏ブロックの例会作品では、2018年グループる・ぱる「蜜柑とユウウツ―茨木のり子異聞―」があります。しかし近年は、単独でオリジナル作品をつくることに転換し、昨年20周年を迎えました(プリエール代表取締役 演劇プロデューサー「有本佳子」)。

そのオリジナル作品が、初めて首都圏ブロックの例会作品として取り上げられ、大変嬉しいことです。「演劇は素晴らしい」「演劇はなんてエネルギーがあるのだろう」という言葉は、観たことがある人や感動したことがある人にしか言えません。会員の皆さんが多くの人に演劇の素晴らしさを広めるためにも、いい芝居を創り届けることは創造団体の責務です。

<作品概要>

最近、ブレーキを踏み間違えるといった高齢者ドライバーによる事故が起きていますが、これは全てのドライバーに可能性があることで、年を重ねるほどリスクが高まることも事実です。しかし、リスクがあるからといって免許を自主返納するのというのは、人としての尊厳やアイデンティティを失うという気持ちになるのではないか…。

誰にでも共感できるテーマですし、本当に深刻な問題になってしまう前に、芝居の力を借りて、明るく楽しく話せるうちに提案できないかとの思いで創りました。

また芝居づくりと並行して落語の制作の仕事も行っており、この経験を生かし、いいとこどりの二つの組み合合わせの構成を考えました。そこで、落語の「死神」と組み合わせ、芝居の冒頭には。本物の落語が演じられ、自然に芝居につながっていくように工夫しています。また舞台上で「死神」がどう芝居の内容に関わってくるか、といった仕掛けも楽しんでもらいます。

2020年、コロナ禍の真っただ中に初演し、客席は切なくなるくらいガラガラの苦しい中で立ち上げた作品ですが、各地の演劇鑑賞会で再演の機会をもらい、内容も練り直すこともでき、多くの人に観てもらうことで作品はブラッシュアップされています。 

 <あらすじ>

郊外の自動車学校、近年は、免許取得者よりも、高齢者講習の方が多い。ある日、母親と付き添いの娘が受講に来た。娘は免許更新には否定的である。「月に何回運転しますか」というようなアンケートにでたらめを書く母親を見て、娘は認知症を疑う。同じ講習を受けに来ている男性は、娘のことを知っているようだが、娘には心当たりはない。

ドライバーが握っているのはハンドルだけではない。人の命を預かることに責任を持てるのか。高齢者講習が終わった後に、母親と娘の関係にどんな変化が生まれるのか…。

(例会作品資料集より)


2024年8月  第292会 劇団民藝「泰山木の木の

日時:8月3日(土) 16時30分開演(上演時間2 時間25分、休憩15分)

会場:FOSTER(フォスター)ホール(昭島市民会館) 

 

作=小山祐士 演出=丹野郁弓 

出演=日色ともゑ 千葉茂則 桜井明美 塩田泰久 他

<劇団紹介>

劇団民藝は1950年4月3日に創立。(前身は1947年発足の民衆芸術劇場=第一次民藝)築地小劇場、新協劇団など「新劇」の本流を歩んできた滝沢修、清水将夫、宇野重吉、岡倉士朗らによって「多くの人々の生きてゆく歓びと励ましになるような」民衆に根ざした演劇芸術をつくり出そうと旗あげされました。第一回公演はチェーホフ作『かもめ』。翌51年の三好十郎作『炎の人-ヴァン・ゴッホの生涯-』で滝沢修演じるゴッホが絶賛され、演劇集団としての地盤を固めました。

さらに『火山灰地』『セールスマンの死』『アンネの日記』『島』『るつぼ』『オットーと呼ばれる日本人』『夜明け前』『桜の園』など、リアリズムを基調としたアンサンブルと密度の濃い舞台づくりで、戦後新劇界をリードしてきました。

1988年に創立者の宇野重吉、2000年には滝沢修が故人となり、2010年に北林谷栄、2012年には大滝秀治、2023年には奈良岡朋子が鬼籍に入りました。

現在劇団員は約150名が活躍。東京公演は年間4作品をラインナップし、全国各地で年間160回前後の公演を重ねています。また、創立の翌年に発足した後援会「民藝の仲間」は、東京のほか全国10ヶ所に事務所を持ち、約2000名の民藝ファンがいます。芝居を観る楽しさとともに、時代と向き合い、現代とは何かを共に考える演目を上演しています。また若手できり開くような、層の厚さを生かしたアンサンブルによる芝居づくりをめざしています。 

<作品概要>

宇野重吉演出、北林谷栄のハナ婆さん役により1963年初演から2003年まで40年(448ステージ)にわたって愛された名作です。2019年ハナ婆さん役に日色ともゑ、丹野郁弓の新演出で新たに上演しました。

「瀬戸内の劇詩人」と呼ばれる小山祐士さんの素朴で美しい土地の言葉を活かしたセリフ。主題歌「わたしたちの明日は」の哀愁漂うメロディと心の温もりと情緒に満ちた庶民たちのやりとり。現代にも通じる行き場のない憤りを作品に込めながらも、執筆にあたって「決して叫んではならない」と自らに課した広島出身の作家のにじみ出る思いが、昭和30年代の瀬戸内を舞台に懸命に生きる生活者たちの群像劇として凝縮された作品です。深い哀しみを背負いながらも、健気で皆に愛され、ときに笑いを誘うハナ婆さんだけでなく、原爆の影響や海の環境破壊、急激な時代の波に抗いながらも思うように未来を描けずにいる若者たちの物語でもあります。

<あらすじ>

小さな汽船が行き来する瀬戸内海の小さな島。白い大きな花をつける泰山木。その木の下で質素に暮らすハナ婆さんは、貧しいながらも9人の子どもを産み、戦争中に優良多子家庭として表彰されました。しかし3人の子は戦死、のこる6人の子までも、広島の原爆で亡くしていました。思えば、殺されるために産んだようなものだ――。悲しい体験をもつハナは戦後、人助けのつもりで、頼まれると密かに子どもをおろしてやっていたのです。

 早春のある日、ひとりの男が泰山木のその家を訪れます。堕胎の罪でハナ婆さんを逮捕しにやって来た木下刑事です。御幸署へ連行する船中でハナ婆さんの話を聞く木下刑事も、また誰にも言えない苦悩を抱えていたのでした……。(例会作品資料集より)


2024年10月  第293会 劇団朋友コルセット

日時:10月6日(日) 16時00分開演(上演時間2 時間40分、休憩15分)

会場:福生市民会館

 

作=太田善也 演出=黒岩亮 

出演=今本洋子 益海愛子 石川恵彩 鈴木千晶 他

<劇団紹介>

俳優座養成所の卒業生が1954年に劇団新人会を結成、その後分裂、解散を経て1970年に前田昌明、山本学、渡辺美佐子、長山藍子などを中心に第二次新人会が発足。1994年に名称を劇団朋友に変更して2024年に創立30周年を迎えます。「朋友」とは志や学芸を同じくする仲間という意味があります。「FOR YOU」には、現代に生きる人々の琴線に触れるメッセージを持った演劇を、共に作りたいとう思いが込められています。

現在、約35名の劇団員と約10名の映画放送部員が在籍。劇団朋友は常に現代の日本人の視点に立って考え、それぞれの時代に生きた真摯な人間像を、あらゆる舞台に描き出していくことを目指しています。 

 <作品概要>

2019年に首都圏ブロック統一レパートリー作品に迎えた「ら・ら・ら」の作家・演出家そして劇団の女優たちとの“いま感じていることを芝居にしたい”という話のなかから「コルセット」は誕生しました。 

あなたは今の生き方に満足していますか?

物をはめられた人生を歩んでいませんか?

あなたを締め付ける「コルセット」そろそろはずしてみましょう。

 

この作品は”自分らしく生きる”をテーマに、登場人物たちそれぞれの葛藤を描きます。 

<あらすじ>

下着メーカーを立ち上げた二人の女性がそれぞれ違う人生を選択します。一人は結婚、出産という「家庭」を持つ人生を生き、一人は下着メーカーの社長として「仕事」の人生を選択します。長く離れていた二人が再会し、それぞれの中で、自分の人生の選択への葛藤が生まれます。

社交的で行動力のある芳美。大人しく芸術肌の久莉子。二人で立ち上げた下着メーカー「ワルキューレ」。二人は最高のパートナーだった。しかし久莉子の突然の妊娠、退社を機に別々の道を歩む。 そして月日は流れ、「ワルキューレ」創立30周年記念パーティー。社長として仕事一筋で生きてきた独身の芳美と、家庭に入り妻として母として生きてきた久莉子は、久々の再会を懐かしむはずが、二人の会話はすれ違い、久莉子の家族、芳美の会社を巻き込んだ騒動へ発展していく…。

あの時ああしていれば、今頃はどうなっていただろう…? 若くもなく、かといって年寄りでもない、そんな50代を迎えた女性二人の物語です。 


2024年12月  第294会 劇団昴「クリスマス・キャロル

日時:12月1日(日)15時30分開演(上演時間2時間30分、休憩15分) 

原作=チャールズ・ディケンズ 脚色=ジョン・モーティマー
訳=石川麻衣 台本・演出=菊池准[演劇企画JOKO]
出演=宮本充/伊藤和晃 牛山茂 林佳代子 他

<劇団紹介>

劇団の源流は1963年(昭和38年)、芥川比呂志ら俳優31名が文学座を脱退し、財団法人現代演劇協会を創立した時点まで遡ります。往事の劇団名は別名でしたが、1976年(昭和51年)から劇団昴とし、スタートしました。「昴」は星座の名称で、いくつもの星が寄り集まって小さな星座を形作っています。「統べる」が「統一する・支配する」ことを意味するのに対し、自動詞「すばる」は「自づと一つに纏まる」ことを意味します。
 劇団昴は文京区千石にあった三百人劇場を本拠地とし、1976年に第1回公演アルベール・カミュ作『カリギュラ』から始まり2006年『八月の鯨』に至る迄、30年間に 110本以上の演目を上演して参りました。
代表的な演目には『セールスマンの死』 『クリスマス・キャロル』『アルジャーノンに花束を』『チャリング・クロス街84番地』などがあります。
 2006年末の三百人劇場閉館に伴い、財団法人現代演劇協会の傘下を離れ「劇団昴一般社団法人」として、池袋に事務所を移し、和洋新旧問わず優れた演劇作品の上演を続けて参ります。(劇団公式HPより)

<作品概要>

『クリスマスキャロル』は文豪ディケンズがクリスマスのために編んだ5つの物語「クリスマス・ブックス」の一作です。

劇団昴では、1991年本邦初演以来2010年まで上演を続け、11年の時を経て2021年再びこの作品に挑みました。

劇団員も愛しているこの作品で、コロナ禍のなか、子どもも大人も疲弊しているので、みんなが知っているこの物語で楽しんでもらいたい、との思いでした。

また通常は演じられない「無知と貧困」についても描かれています。戦争とコロナの現在、このことがどれだけ子どもたちを傷つけているのか、そういったメッセージも感じさせる作品になっています。

<あらすじ>

イブの夜、けちで頑固で偏屈な老人スクルージは、死んだ同僚マーレイの幽霊から、自分のような強欲なままで亡くなることのないように警告を受けます。そして、過去・現在・未来のクリスマスの三人の精霊達に導かれ、時空を超えた不思議な時を過ごします。

彼がそこに見たものは孤独でした。少年時代、温かな家族の営み、恋人との未来を描き幸せそのものだったスクルージでしたが…。

彼が手放してしまったものは何だったのか、なぜそうしてしまったのか。過去を振り返りながらスクルージの心にも変化が少しづつ現れます。

現在の彼は、貧しい人に手を差し伸べることをせず、使用人に対しても厳しく処しています。精霊に導かれ、使用人の温かい家庭を見て、足の悪い息子について気になった彼は、その子の未来の死を、そして自分自身の未来に待つ恐ろしい光景を目の当たりにします。

全ての時間が過ぎた朝、スクルージの心にあたたかな光が差し込みます。クリスマスの朝に、すべての人に希望の灯がともります。(例会作品市資料集より)